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| 村上 輝夫 九州大学大学院工学研究院知能機械システム部門 |
| 生体医工学と生体工学リサーチコア |
![]() (図1) ![]() (図2) ![]() (図3) |
先端医療の実用化を推進するためには、臨床技術に加えて多様な工学技術の導入が必要とされるが、そこでは医療現場の医師・研究者と工学研究者・技術者の協力が有用になると考えられる。生体医工学の研究は、20世紀後半に着手された領域が多く、とくに欧米の諸大学では生体医工学に関する学科・研究施設が多数設立され研究や技術開発が加速された。国内でも諸分野で生体医工学の研究が着手されたが、教育研究体制が不十分な体制にあり、人工臓器・インプラントや医療デバイス、とくに生体内で使用される人工弁・ペースメーカ・人工関節・人工血管などの分野では大きな遅れを取ってしまった。ポストゲノム先進医療や再生医療、ロボット支援医療などの分野において国際的に先導的な医療を実現するためには、医療分野と工学分野間の融合研究の推進が必須と思われる。 九州大学内において、昭和63年より発足した九大生体材料・力学研究会では、毎年2回の研究会での研究発表を通じた研究交流や共同研究を実施し、ハイブリッド人工肝臓の開発、整形外科バイオメカニクス、バイオマテリアル、歯科インプラント等に関する種々の成果をえてきた。さらに、研究領域を拡大し協力体制を強化するために、学内外から33名の工学・医学・歯学研究者の参集を得て、生体工学分野の研究連携組織として、「九州大学生体工学リサーチコア」を本年より発足させた。当初は、先進医療デバイス・人工臓器・再生医療・医療福祉支援システムに関して学際的融合研究を推進する予定であり、その研究分野および組織の概要を図1に示す。学内外の関連研究組織との連携も進め、先端医療の発展に寄与できることを目指しているので、ご協力をお願いしたい。なお、医工連携の研究プロジェクトや、若手研究者育成のための学際的生体工学教育にも取り組んでいる。 個々の研究については、ホームページ( http://biorc.mech.kyushu-u.ac.jp/ )で紹介しているが、以下には2つの研究例を紹介する。 1. 高機能ハイドロゲル系人工軟骨の開発 現在の人工関節では10年以上の臨床実績が確立しつつあるが、長期使用に際しては摩耗粉に対する周囲組織の炎症反応や過大摩耗に起因して再置換が必要な症例も出ている。耐久性を改善するために、潤滑状態自体を健全な生体関節に近づける方策として、高機能人工軟骨の実用化が期待されている。図2は、高含水のPVA(ポリビニルアルコール)ハイドロゲルを用いた人工膝関節の歩行模擬シミュレータ試験の摩擦測定例を示す。二次関節液を模擬したヒアルロン酸と蛋白の混合溶液では摩擦面に球状蛋白主体の吸着膜(AFM像参照)が形成され、高荷重となる立脚期においても摩擦係数0.01以下の低摩擦状態が実現された。長期耐久性の改善とともに骨との固定性や生体適合性の評価を行うなど、知能機械システム部門と整形外科との共同研究として進めているところである。 2.高分解能CT によるヒト椎体の微細構造解析 整形外科 三浦裕正(リハビリテーション部)・馬渡太郎・岩本幸英 海綿骨は皮質骨よりも代謝回転が速く、閉経後急速に骨量減少がみられるので、骨粗鬆症の病態解明のために重要だとされるが、その力学的性質を規定する因子として3つの因子が挙げられる。第1は骨の量(quantity)で、DXAを用いた単位面積あたりの骨量と、pQCTを用いた単位体積あたりの骨量の検討が行われている。第2の因子は質(quality)で、骨中にマイクロクラックが集積したり、ミネラル含量の変化やコラーゲンの劣化により、骨質が低下するといわれている。骨梁自体の物性評価については、微小材料試験器を用いて数十ミクロンの骨梁に圧子(indenter)を押しつける力学的試験が行われているが、まだ検討段階である。そして、第3の因子が微細構造(microarchitecture)である。これら3つの因子のそれぞれがどの程度力学的強度に寄与しているのかはまだ不明だが、粗鬆化に伴う海綿骨の力学的強度が骨量と必ずしもイコールではないという報告があり、骨微細構造への関心が非常に高まっている。これは、同じ量の木材を用いて建物を造る際に、梁構造を有する構造のほうがより強い強度を有することを考えれば、理解しやすい。我々はin vitroの研究で確立されてきた骨微細構造解析の手法を、最新の高分解能CTを用いて、実際にヒトにおいて応用する試みを行っている。 図3は72歳の健常女性と、同じ72歳であるが20歳時に両側卵巣摘出術を受けられた骨粗鬆症患者のin vivoでの第四腰椎三次元画像である。骨粗鬆症患者において海綿骨の骨量低下と連結性の途絶が明らかとなった。 九州大学生体工学リサーチコアとは 本リサーチコアは学部学科の枠を越えた学際的研究拠点を設置し、専門分野の壁を越えた新しい共同研究を行うための新しい連携組織です。 21世紀はゲノム情報の利用や再生医療の急速な発展が期待されていますが、現在臨床で用いられる人工臓器・インプラント・各種医療デバイスと組織再生医療の協調的応用に関しても数多くの問題があます。これらの課題を解決するためには工学技術と医療技術との積極的連携が望まれ、分野の壁を越えた共同研究を促進する必要があります。 九州大学生体工学リサーチコアは専門分野を超えた研究課題に関して情報交換を行い、新たな共同研究テーマの創出を目的とします。そこで、工学・医学・歯学分野の生体工学に携わる研究者が、生体工学に関する研究会を定期的に開催するとともに、協力して生体工学分野の研究課題に取り組んでいます。 九州大学内では、昭和63年より九大生体材料・力学研究会が設立され、生体材料・生体力学や先端医療に関する学際的な課題に関して、毎年2回の研究会での研究発表を通じた研究交流や共同研究を実施し、種々の研究成果をあげてきました。この度、研究領域を拡大し連携体制を強化するために、学内外から33名の工学・医学・歯学研究者の賛意をいただき、生体工学分野の研究連携組織として、本リサーチコアを設立しました。当初は、先進医療デバイス・人工臓器・再生医療・医療福祉支援システムに関して学際的融合研究を推進する予定です。 現在、「医工連携による先端医療の開発」プロジェクトを実施するとともに、生体工学分野で必要とされる分野を超えた専門知識を有する若手研究者の育成をめざし総合大学としての特色を生かした「生体工学における学際的教育の創設」に取組んでいます。 |
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